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日記504

 

 

ファンシー富士箒。

 

 

3月11日の読売新聞に載っていたこどもの詩をなんとなくメモしていました。すこしでも気持ちがひっかかったものは即メモです。要チェックやで。忘れっぽいから。なんでも忘れる。ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね。

 

読売をとっているのは、父の趣味です。わたしはあまり読まないけれど、読むところは決まっていて、だいたいコボちゃんと外報欄とこどもの詩と悩み相談と日曜日の書評欄に限られます。あと本の宣伝広告。サンヤツ。祖母は、「なにがなんだかわからないけどまいにちヒマだから隅から隅まで読んでいる」と話します。株価まで気になるところはチェックしているらしい。すごいと思う。

 

メモしていたのは、福島県南相馬市の6歳の男の子が書いた詩です。

 

 

すうじ

 

じゅうより

ひゃくより

すうじがなくなるくらい

ママのこと

だいすきだよ

 

 

やばい。こんなこと言われたら、あたまがどうにかしてしまう。にょま〜!ってなる。「にょま〜」がどういう状態かはわからない。たぶん、すうじがなくなるくらいの状態である。6歳児のほうが表現力があるな……。かしこい。数字の概念が脳から飛ぶのだ。

 

これを読みながら思わずニタニタして、部屋中をのたうちまわってしまった。じぶんに向けて言われていなくてものたうちまわるほどなのだから、この男の子のママの心中はいかばかりか知れない。わたしがママだったら泣くと思う。しあわせの絶頂でもういま死にたいと願うだろう。このしあわせを永遠のものにしたい。死をもって幸福を完成させようとする。しあわせ過ぎて死ぬ。死因、しあわせ。不自然な死に方かもしれないが、他殺でも自殺でもなく自然死だ。司法解剖の結果、しあわせであることが判明する。しあわせな死体。身体のどこを切っても高濃度のしあわせが検出される。しあわせ多量が原因でひとは死ぬ。

 

でも、いけない。死んではこの子が路頭に迷うから、がんばって踏みとどまらないと。ママ、死なないから。なに考えてるのかしら。あたしのバカ。死んだらダメ。がんばれ、あたし!ああ、だけどしあわせ!にょま〜!いや、そっちを向いてはいけないの!適度に不幸なことを考えてバランスをとるのよ。さっき深爪しちゃって指に血がにじんでる。便秘がつづいている。腕のほくろ毛をバカにされた過去がある。先週、タモリ倶楽部を見逃した。ラッパーのUZIさんが大麻所持で逮捕された。父親の両肩から変な長い毛が生えている。大相撲中継を見ているとハゲた観客の人数をかぞえてしまう。きのうカメラに映ったつるっぱげは13人。けっこういる。13人の刺客。13人の頭皮。13は不吉な数。背中が毛深いことをひそかに気にしてる。とにかく毛が気になる。人間はみんな体毛が薄い。濃くても中途半端で気持ちが悪いと思う。もっと、もふもふの生物に生まれたかった。うさぎがいい。うさぎになりたいな。うさぎになる。うさぎになろう。はっ!いけない、うさぎになっても、あたしの子が路頭に迷ってしまう。ママでいないと。あたしはママなのよ。でもこの子のママでいたら、あたし、しあわせ過ぎて、あたまがおかしくなるの……。どうしよう、もうわかんないよ。にょま〜。この致死量のしあわせ、どうしたらいいですか。

 

というお悩み相談をハガキに書いて送り、こんどはママが新聞に載ることになるだろう。よかった、わたしはこの男の子のママじゃなくて。ママって、いろいろとたいへんです。パパのことは、かなしいけれど、たぶん、すうじがなくなるくらいだいすきではないのでしょう。

 

野暮を承知で「パパは?」とこどもに聞いてみたら、「パパは4阿僧祇くらいだいすきだよ」と言うと思う。阿僧祇もなかなかの数だけど、「すうじがなくなる」ほどではない。パパは数字の範囲内に収まるのだ。良くも悪くも男の子の感受性です。最低でも70不可思議くらいほしかったけれど、パパは4阿僧祇で止まるのか……。せつない。

 

でもいずれ、長ずるにつれてママの存在も数字に収まるようになる。ママのことが数字でいうと、どのくらいだいすきなのか、計算をしたいがために数学をいっしょうけんめい勉強して、えらい数学者になっちゃうかもしれない。ママの存在だって、数学的に記述する方法がまだ見つかっていないだけで、数学的対象なのだ。この世のすべては数学的に説明がつく。どんな物理的現実も、人間関係も、愛の答えも。そう信じて研究に没頭し、死に物狂いで愛の数学理論を構築してしまうのかもしれない。その素晴らしい業績は世界中から称えられ、権威あるフィールズ賞を贈られるも、純粋過ぎる性格ゆえにペレルマンのような狷介固陋さを発揮して、受賞を辞退するのかもしれない。そして晩年は、ゲーデルみたいに精神を病んでしまい、やがて数字の概念も脳から消え去り、衰弱して没するのかもしれない。ほんとうに「すうじがなくなる」ほど、狂気のこもる愛を、生涯をかけ数学で証明してみせた、悲劇の天才として歴史に名を残すのだろう。

 

 

すうじがなくなるくらい

ママのこと

だいすきだよ

 

 

すべてはここから始まる。

映画化決定。

 

 

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コメント

わたしも相当にまにましました。
少ない文字でこれ程パンチ力のある詩があるだろか。
すごいな。脳にイイ汁頂きました御馳走様です。

  • わたし
  • 2018/03/19 18:34

にまにまですね。
6歳のハードパンチャーです。

「ママのこと」で改行するあたりが小憎い。この改行でパワーが充填されるのです。そして満身の力をこめて「だいすきだよ」を解き放つ。ヒィ!やばい。まともに食らったら、ただでは済まない。この破壊力はひとを殺めます。危険です。